Kokurai@黒羅木工房
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創作系
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【SO2二次創作イベント】とあるオーナーと妖精の休憩タイム

「…ナー!オーナー!聞いてますか、オーナーってば!」

窓から降り注ぐ陽光の中、カウンターに肩肘をついてぼんやりと外を眺めるオーナーに向かって、ボクは声を張り上げた。

「…あぁ、妖精さん。ごめんよボーッとして。何の用かな?」

「もう、5分前に聞いたじゃないですか!水汲みが完了しました。次の作業の指示をお願いします」

あれだけ大声で知らせたのに。ボクはわざとらしく大きなため息をついた。

ボクたちはいわゆる“作業妖精”と呼ばれる部類の種族だ。
妖精の中には気まぐれなヤツもいるけど、ボクたち作業妖精は違う。
この神秘的なMUTOYS島に、無数に存在する店舗…そのオーナーたちから仕事を貰って作業をする。
休憩もなく給料もなく、稀にオーナーがくれるのは労いの言葉と休暇の申請くらい。
それでもボクたち作業妖精は特に文句も出さず仕事に従事する。
なんでそんな献身的なんだって?さぁ、ボクにもよく分からない。生まれついての事だから。
気が付いた時にはここで働いていた。もうまもなく創業70日を迎える、まだまだ若手のよろず屋で。

「しかし、創業70日目かぁ…早いもんだなぁ」

若手オーナーは感慨深い表情で窓の外を見たまま呟いた。
ボクは呆れ顔でカウンターに腰かける。まだ次の作業を指示されてないから、実質休憩みたいなものだ。

「あぁ、またその事を考えていたんですか。オーナー、その台詞は今日で3回目ですよ」

「えぇ?もうそんな呟いてる?まぁ中途半端とは言え節目だからねぇ、色々考えちゃうよね」

オーナーは目線を窓からカウンターに落とす。
開店当初から比べると少しだけ傷の増えた木製のカウンター。
増えたメモと張り紙。書かれているのは作業内容や注文、仕入れについての事ばかりだ。

「この川辺に店を構えてさ。最初は君にひたすら水汲みと素材探しをお願いしてたなぁって」

「そうでしたね、オーナー。それで水と薬草でハーブティーを淹れて、お客さんに振る舞ってましたね」

つい2か月と少し前の事なのに、懐かしさがこみ上げる。
最初は水汲みすら覚束なくて、素材探しはどれが使えて何が役に立たないのか分からなくて。
ハーブティーを淹れたら煮出しすぎて渋くなりすぎて。うっかり零して無駄にしたことも何度もあった。

「今でこそ僕は夢を叶えるに至ったけど、最初は大変だったよね」

「オーナーはこのアメジスト街で鍛冶屋になるんだって息巻いてましたもんね。鉱石も最初は必死に掘って…」

「結局、自力調達じゃとても追いつかなくて仕入れに移行したけどね。それで黒字が出るようになって嬉しかった」

アメジスト街、特にオーナーが店を構えた森の中の川辺は、とても鉱夫が鉄を掘るのに向いてるとは言い難い地形だった。
それでも最初は地道に僅かな鉱脈を見つけては採掘し、精錬して鋼鉄の武具を拵えてきた。
鍛冶屋としての腕が認められて武具の売上が増え、鉄が不足し始め、仕入れを余儀なくされたけども。

「インゴットを仕入れるのに家具作りで稼いだ資金が役に立ったんだよなぁ。やってて良かったよ、木工」

「木製家具の売れ行きもなかなか凄かったですもんね。あんな値段でどんどん売れて行くんですもん」

鍛冶を本格的にやる前に、オーナーは地道にお金をためていた。
最初はハーブティー売りから、次に壺や湯飲みといった焼き物売りへ。
更には森の中である事を生かして丸太を伐採して、木製の食器や家具をたくさん作って。
駆け出し店舗は今や立派なよろず屋へと姿を変え、売り物も増えた。
今は鋼鉄武具と家具が棚に並び、オーナー曰く「鍛冶屋と家具屋がせめぎ合ってる」状態らしい。

「忙しいけど、僕が目指したかったのはコレなんだよね」

「忙しいのはボクたちですけどね」

「アハハ、そうだった。君たち妖精さんが居なければ、僕は何もできなかっただろうなぁ」

オーナーがふと、ボクの頭に手を伸ばす。
明るいピンク色の髪に大きな掌が被さり、そのまま優しく撫でられた。

「君たちのおかげだよ。本当にありがとう」

ボクは湧き上がる感情を抑えるのに必死だった。
作業を命じられ、こなすのは妖精にとって当たり前のことだ。
なのにどうして…こんな言葉を貰って、嬉しいのだろう。

「…そう思うなら、もっと有効的にボクらを使って下さいよ」

頭に被さる大きな手を、しかし撥ね退けることなく優しくどかしたボクは、俯き加減で呟くのが精いっぱいで。
オーナーはそんなボクを見て笑顔なのだろう。楽しそうな声音が降ってくる。

「これからも当店の発展の為に、よろしく頼むよ」

「もうっ!だったらこうしてお喋りなんかしてないで!早く次の作業を指示してって言ってるじゃないですかぁ!」

いつまでもおちょくられるのが悔しくて、でも楽しくて。
これからもボクはオーナーとこの店を盛り上げていきたい。
このMUTOYSの片隅で、アメジスト街の森の中で、小さく輝く店でありたい。

だからオーナー、次の仕事をちょうだい?

「そうだな…じゃあ妖精さん、次の作業は―――」

◆後書きと言い訳◆
 素晴らしい企画をありがとうございます。
 ちょうど自分の店が創業70日を迎えたので、その記念に。
 ゲームプレイ初期から今までを妖精さんと一緒に振り返る妄想を文章に起こしてみました。
 MUTOYS島の更なる発展を願って、この小説を捧げます。お目汚し大変失礼しました…!

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